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PC-98化する日本のケータイ

「PC-98」というパソコンがあったことを知っているだろうか。「PC-98」とはNECが日本の環境に合わせて独自規格のパソコンで、90年代半ばまでは圧倒的な国内シェアを持ち、デファクトスタンダードとして、日本のパソコン市場を独占していた。それが、海外のデファクトスタンダードとなったDOS/V(PC-AT互換)機とWindows95が登場によって、あっという間にシェアを落とした。いまでは、「PC-98」機を探すことも難しい。

では、「PC-98」はなぜ絶滅してしまったのだろうか?

「PC-98」は、ほとんど日本市場のみに出荷していたため、日本だけの市場ボリュームになってしまい、規模の経済がきかず、製品としては価格が高止まりしてまう。それに比べて、DOS/V(PC-AT互換)機は世界でのデファクトスタンダードとなり、圧倒的なコスト差が生まれてしまったのだ。最近の日本のケータイを見ていると、そんな「PC-98」を思い出してしまう。日本という市場に合わせて高機能・高品質・高価格を維持してきたケータイは、まるで「PC-98」である。

日本のケータイは世界でも進んでいるという人も多い。しかし、携帯電話に関する調査などを行っていると、ハイテクなケータイへの興味が薄れており、ケータイはコモディティになってきていることを感じる。最近の日本のケータイは、液晶の高精細化、カメラの画総数アップ、新たなミドルウェアの搭載などしているが、ユーザー視点でみると、何も変わっていないように感じてしまう。これは、本質的な機能が変化していないからなのだろう。ユーザーのベネフィットが変わらなくなってしまった(進化しなくなってしまった)ケータイは、急に「PC-98」のように規模の経済性によって、一気に市場が変化してしまう可能性があることを忘れてはいけないと思う。